持続可能な社会への関心が高まる中で、「サステナブル」「エシカル」といった価値観を体現する企業が注目されています。株式会社ファーメンステーションは、独自の発酵技術を軸に、未利用資源を新たな価値へと生まれ変わらせるバイオスタートアップです。本記事では、同社の取り組みや主力事業についてご紹介します。
株式会社ファーメンステーションとは?
ファーメンステーションは、2009年に設立された日本のバイオものづくり企業です。本社は東京都墨田区にあり、岩手県奥州市には自社工場兼研究施設「奥州ラボ」を構えています。同社のパーパスは「Fermenting a Renewable Society(発酵で楽しい社会を!)」。未利用バイオマスを活かし、循環型のものづくりを通じて環境負荷の低減と地域資源の活用を目指しています。
代表取締役の酒井里奈氏は、前例の少ない分野である「発酵×アップサイクル」に挑戦し、企業や自治体と連携しながら、持続可能な産業モデルの確立に取り組んでいます。
発酵アップサイクルという独自技術
ファーメンステーションの大きな特長は、独自の「発酵アップサイクル技術」です。これは、規格外の農作物や飲料・食品製造過程で生じる副産物など、通常は廃棄される未利用資源を原料として活用し、発酵のプロセスによって新しい素材や製品に再生させる技術です。
たとえば、発酵から生まれるエタノールは化粧品や除菌スプレーの原料に。さらに発酵残さ(粕)は飼料や肥料としても利用されており、まさに“無駄のない”循環型の仕組みが実現されています。
ファーメンステーションの主力事業と展開
ファーメンステーションは現在、以下の3つを軸に事業展開を行っています。
1. 原料開発・販売
発酵によって得られたバイオエタノールや発酵粕を原料として、化粧品、日用品、食品分野へ供給しています。これらの原料はオーガニック認証を取得しており、エシカルやサステナブルを重視するブランドに支持されています。
2. 共創型素材開発
企業や自治体と連携し、その土地で出た副産物などを活用してオリジナル原料を開発する「共創事業」も推進中です。たとえば、食品工場の搾りかすや規格外フルーツなどを使って、企業ごとの独自原料を共同開発し、それを商品化することで廃棄削減と地域循環の両立を図っています。
3. OEM/ODM製品づくり
ファーメンステーションでは、原料の提供にとどまらず、自社の技術を活かした商品開発支援(OEM/ODM)も行っています。製品設計から容器提案、パッケージデザインに至るまでトータルでサポートする体制が整っており、小ロットからの対応も可能です。
エシカル消費とトレーサビリティへの配慮
同社の製品づくりは、ただ環境にやさしいだけではなく、「どこで・誰が・どのように」つくったかが明確であるというトレーサビリティを大切にしています。農家や地域とのつながりを可視化し、消費者が選ぶ背景を共有できる設計は、エシカル消費を求める層からも共感を集めています。
また、国際的なB Corp認証や「サステナブルコスメアワード」受賞など、社会的責任や持続可能性に関する評価も高く、信頼性のある取り組みとして注目されています。
岩手・奥州市から生まれる循環モデル
ファーメンステーションが奥州市に構える「奥州ラボ」は、発酵プロセスの要となる自社工場兼研究所です。地元農家との連携によって未利用資源を収集し、発酵によって原料化。副産物は畜産業や農業に還元されることで、地域の資源循環モデルが形成されています。
東京の都市部と岩手の地方拠点をつなぎ、都市と地方が協力して価値を創出するビジネスモデルとしても評価されています。
まとめ|「捨てる」から「活かす」へ
ファーメンステーションは、未利用資源を発酵の技術でアップサイクルし、化粧品や日用品、食品などの原料へと生まれ変わらせる先進的なバイオ企業です。地域との共創やエシカルな設計、環境負荷の少ないものづくりを軸に、持続可能な未来の実現に貢献しています。
「捨てる」から「活かす」へ…そんな発想の転換が求められる今、ファーメンステーションの取り組みは、サステナビリティに真剣に向き合う企業や消費者にとって、大きなヒントとなるはずです。